データビジュアリゼーションとインフォグラフィックスの違い

 

最近はデータビジュアリゼーションもインフォグラフィックスも目にする機会が増えました。しかし、この二つを混同している人が少なからずいるように感じます。データビジュアリゼーションとインフォグラフィックスはどちらも情報を視覚的にわかりやすく伝えるという意味では同じですが、違う部分も多く存在し、分けて考えた方がいいです。今回は、この二つの違いについて書いてみたいと思います。

 

データビジュアリゼーション

f:id:vizgeek:20120604153014p:plain

データビジュアリゼーションの目的の一つは、見えないものを見えるようにすることです。わかりにくいので言い換えると、数字や単語が並んだデータの中から何らかの意味ある情報を見つけ出す、ということです。では、意味ある情報を見つけるためにはどうすればいいのでしょうか。下の図を見てください。

f:id:vizgeek:20120604123459p:plain

これは、生のデータから最終的な視覚化までのプロセスを表しています。まず何かデータがあります。そのデータにはいろいろなものが入っているので、始めにいらないデータを削除したり、また、統計的手法を用いてデータを整理したりします(これ重要!)。そして、データが整理されたらそのデータの種類(時系列、ワード、ネットワーク...)によって、データを表現する方法を決めます。後述のインフォグラフィックスと違い、データが時間ごとに変わったとしてもプログラムで行われる計算、視覚化は変わらないので、何度も繰り返し使うことができます。

Focus & Context

データビジュアリゼーションで重要なテクニックの一つにFocus & Context というものがあります。これは、例えば、ソーシャルグラフを考えてみてください。そのグラフの全体を見ている時に、ある一部のクラスター(クリーク)を拡大して見たいという場合があります。全体も見れるし、ある一部だけを見ることもできるようにすることをFocus & Context と言います。このテクニックは、データビジュアリゼーションではできますが、インフォグラフィックスではできません。

 

インフォグラフィックス

f:id:vizgeek:20120604145842j:plain

一方のインフォグラフィックスですが、こちらはいわゆる見た目のデザイン重視です。既にある整理されたデータをいかにわかりやすく、多くの人に興味を持ってもらうかを目的としています。データビジュアリゼーションは、裏でガリガリとプログラムを走らせるのに対し、インフォグラフィックスはプログラムを走らせることはなく、意味あるデータはすでにあるものとして、それをデザイナーがillustratorなどを使ってデザインします。インフォグラフィックスはデータが変わればまた一からデザインし直さなければなりません。つまり、ある一時のデータを表現するのは得意ですが、データが変化したらもう一度作る必要があります。

 

 上記の比較からわかるように、データビジュアリゼーションとインフォグラフィックスの違いは、データが変わっても同じことができるかどうかなんだと思います(データの種類は同じ)。科学的にいうと再現性があるかどうか。その意味で、再現性のあるデータビジュアリゼーションが、科学的な研究として成立するのは不思議ではありません。データビジュアリゼーションはエンジニアメイン、インフォグラフィックスはデザイナーメインですが、どちらか一方できればいいということではなく、データについての理解からデザインまで幅広い知識と能力が必要とされるのがこの分野なのかなと思っています。

 

(追記)

記事公開後、いろいろご意見いただきました。ありがとうございます!とてもわかりやすい説明をしていただいたので、2つ紹介させていただきます。

・知りたいことがある→データビジュアリゼーション。言いたいことがある→インフォグラフィックス、という区分けかも

・データをアルゴリズムに通して見えるようにするのがData Visualization、デザイナーの脳みそを通して描くのがインフォグラフィックス